2015.07.22
<東京ディズニーランドの感動1>
ある若い夫婦がディズニーランド内のレストランで「お子様ランチ」を注文しました。
お子様ランチは9歳以下とメニューにも書いてあります。
子供のいないカップルに対しては、「恐れ入りますが、このメニューにも書いておりますが、お子様ランチはお子様
用ですし、大人には少し物足りないかと思われますので・・・」と言うのがマニュアルです。
しかし、アルバイト(キャスト)の青年は、「失礼ですが、お子様ランチは誰が召し上がるのですか?」
「死んだ子供のために注文したくて」と奥さんが答えました。
「私たちには子供がなかなか授かりませんでしたが待望の娘が産まれましたが、身体が弱く一歳の
誕生日を待たずに神 様のもとに召されたのです。
子供の一周忌に、いつかは子供を連れて来ようと話していたディズニーランドに来たのです。
そうしたら、ここにお子様ランチがあると書いてあったので思い出に・・」そう言って夫婦は目を伏せました。
キャストのアルバイトの青年は「そうですか。では、召し上がって下さい」と応じ、そして、「ご家族の皆さま、どうぞこちら
の方に」と四人席の家族テーブルに夫婦を移動させ、それから子供用の椅子を一つ用意しました。そして、「子供さんは、こちら
に」と、まるで亡くなった子供が生きているかのように小さな椅子に導いたのです。
キャストは「ご家族でゆっくりお楽しみください」と挨拶して、その場を立ち去りました。若い夫婦は失われた子供との日々を噛
みしめながら、お子様ランチを食べました。
<東京ディズニーランドの感動2>
3・11の震災の日、あるアルバイトキャストが、店舗で販売用に置いていたぬいぐるみの
「ダッフィー」を持ち出して、お客様に「これで頭を守ってください」と言って渡しました。
店舗で販売していたクッキーやチョコレートなどのお土産商品を被災食として無料で配布しました。
<東京ディズニーランドは何故すごい)
さて、東京ディズニーランドが開園してから30年以上がたっていますが、いまなお、リピーターが絶えないすごい人気です。
ディズニーランドのようなテーマパークもサービス業ですね。
「サービス業って何?」もいつか書こうと思っていますが、今日は、サービス業としての東京ディズニーランドのすごさ
について書きます。
サービス業の多くは、対人サービスが中心であり、お客様と接する人の行動がサービスの質に大きな影響を与えます。ディズニーランドでも、一日平均、一人のゲスト(入場客)が60回以上キャスト(従業員)に接触しているという統計があります。
お掃除している人、カストーディアルというキャストよく見かけますね。
アルバイト応募者にすごい人気のキャストのようです。ただ、お掃除している人ではないことは、皆さんわかりますよね。
東京ディズニーランドは、従業員の9割がアルバイトといわれていますが、東京ディズニーランドに行ってキャストと接したことで不快な思いをしたことがある方は、たぶんいないのではないかと思います。アトラクションの楽しさも素晴らしいですが、この「おもてなし」の心あふれるキャストの存在も夢と魔法の国をささえる大きな柱といえると思います。
このアルバイト中心のキャストが、どうして感動的なゲストへのおもてなしができるのか。
当然ながらマニュアルはあります。東京ディズニーランドには、300冊を超えるマニュアルがあるといわれています。
また、チェックリストや管理者によるチェック体制、キャストのモチベーション向上に向けた褒賞制度もあります。
もちろんこれらも十分機能していると思いますが、私が思う一番の理由は、
キャストが「自分で判断できる」ようにしている
ことだと思います。
サービスエンカウンター(顧客接点部)では、何が起きるかわかりません。
非常に多様で柔軟な対応が必要となる場面が多くあるでしょう。
起きる可能性があることすべてを予測し、それに対処するマニュアルを作成し、徹底させることは、不可能と思います。
ではディズニーランドはどうしているのか?
→キャスト自ら判断し動ける仕組みを作っている。
どうやって?
1.スキルよりウィル(意志)
キャストの研修では、ウオルト・ディズニー自身と彼がディズニーランドをつくった歴史、フィロソフィー、ポリシー
など「おもい」「スピリット」などコアとなる部分を教える。
障害にぶつかっても夢を持ち続けたウオルト・ディズニーの生き方、おもいを教える
2.判断基準の明確化
「Safety(安全)」、「Courtesy(礼儀正しさ)」、「Show(ショー)」、「Efficiency(効率)ディズニー
4つの行動基準の徹底。
「グッドショー・バッドショー」などゲストやキャストに対する行動の善悪や良否の判断をわかりやすく教える。
「必ず行わなければならないこと」「絶対に行ってはならないこと」を教え判断基準を明確にしておく。
これらの研修を通じて、自ら判断し行動できる人財を育成しているのです。
企業にとって、理念、社是、ミッション、ビジョン、共通価値観(バリュー)などが必要な理由がここにあります。
まずは、スキルよりウィル(意志)植え付けることによって、不測の事態発生時に理念に沿った行動を自ら判断し、行動できるようにすることが重要なのです。
東京ディズニーランドでは、ウオルト・ディズニーの生き方、考え方がお手本ですね。
最後に
冒頭にご紹介した、キャストの行動は、たぶん、いちいちマニュアルには書いていないと思います。お子様ランチの事例では、マニュアルに反しているのかもしれません。この場合、マニュアル違反でアルバイトを叱る企業もあるかもしれません。
しかし、これらの行動は、ディズニーランドの行動基準とウオルト・ディズニーの志(おもい)を教えられたキャストが自ら判断して行動した結果なのです。ディズニーランドでは、この「おもい」に反しない行動こそが何より優先する真にキャストにもとめられる行動なのです。
<参考文献>
ディズニーで最高のリーダーが育つ10の法則 ダイヤモンド社 リー・コッカレル
ディズニーに学ぶ顧客循環力 学研新書 志澤秀一
ディズニー感動のサービス 中経文庫 小松田勝
ディズニーの「おもてなし」プラチナルール 日本文芸社 J・ジェフ・コーバー
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