「守破離」と経営

2015.07.17

守破離という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

 

もともとは、茶道の世界の言葉です。

事を学び、発展させていく上での順序 で、江戸中期の茶道、江戸千家の祖、川上不白が『不白筆記』(1794年)

であらわしたとされています。武道や芸事など習い事一般に共通する考え方ですね。

 

※足利三代将軍義光時代に、「能」を完成させたともいわれる観阿彌、世阿彌親子によって開かれた能の至芸

   に至る段階「序破急」(風姿花伝)が原点とも言われる。 

 

<守破離とは>

 

1.『守』  守とは、「下手」の段階で教えをそっくり、そのまま守ること。

       一切を教えの通り守る。我流を慎み、型どおりに愚直に実行する。

       応用や工夫、改善はあり得ない世界。  

 

2.『破』  破とは、「上手」の段階で、守のものを自分のものとした上で

       そこに自分の新たな工夫、改善を加え、その学んだ型を打ち破り

       新しい型を創ること。

 

3.『離』  離とは、この二つの段階を過ぎた、「名人」の段階で、創った自

       分の型に固執すると成長が止まる。そこで自分の型も離れて自由

       自在の心境になること。

 

<守破離と経営> 

 

実は、この守破離ですが、会社の経営にとっても重要な概念なのです。

会社が、どのようなマネジメントスタイルをとるかは、会社が現在、どの段階にある

か見極めて決定する必要があるのです。

 

新しい事業を立ち上げるときなどには、「模倣」「標準化と徹底」などが必要なマネジメントであり、

更に次の段階は、事業の拡大のために「継続的改善」をしていく段階を経て、そして、「創意・工夫・独創に

よる革新プロセスの実現」を促すマネジメントへと変化していかなくては、競争優位にたてません。

お客様に支持され続けて行く為には、守破離サイクルを意識した、適切なマネジメントをしていくことが

重要となります。

 

現在、世界最強の電子機器メーカーである、韓国のサムスン電子も、かつて、テレビ事業で、ソニーの技術

を徹底的に分析、模倣して「守」の段階からスタートし、継続的な改善マネジメントによりスマホ事業などで

事業を拡大、世界を席巻しています。「守破」のマネジメントが世界一と思います。

 

そのサムスンも最新の業績をみると、ちょっと陰りが見えてきているようです。

しかし、そこは、さすがカリスマ経営者のイ・ゴンヒ会長です。

スマホ絶好調のさなか、2010年に「今後10年以内に、サムスンを代表する製品はなくなる。迷う時間はない。」

とメッセージを出しています。

ようするに「離」の段階へのマネジメントの舵をすでに切っているのです。

バイオや医療機器分野などの未来戦略事業を模索しているようです。

「離」が成功して、今後もサムスンが世界最強のメーカーとして君臨し続けるか見守りたいと思います。

 

経営にとって、守破離の段階、タイミングを意識することは、とても重要なことなのです。